環境教育研究
環境教育に関する研究、特に環境教育プログラムの評価/効果測定をしています。環境教育プログラムの評価とは「プログラムが与えるインパクト/効果を定量的・定性的に把握し、プログラムについて価値判断を加えること」、「ミッションの進捗状況を把握し、改善点を見つけること」などと定義がされています。研究をする際には、プログラムの参加者への意識調査、活動の参与観察、プログラム運営者との協働などを通して、環境教育プログラムが人々や地域に与える短期的・長期的効果を明らかにすることを心掛けています。
また、ロジックモデル、セオリーオブチェンジ、360°フィードバック、アクションリサーチなど、多様なツールや手法を用い、プログラムの改善に活かせるようなデータの獲得を目指しています。
私が学んだ米国の大学院では「環境教育の評価」に関する授業が数多く開講されていて、評価の設計や調査・分析方法から倫理的問題まで幅広く教えられていました。米国には環境教育の評価について専門的に学べる教科書もいくつかありました。ただ、環境教育の評価を行ううえで、教科書に書かれていること以外にも重要なことがあるような気がします。
私は大学院生の時に初めて評価に関する実践的な研究を行いました。評価対象であった里山で行われているプログラムに、まず私自身が参加し、内容について学びました。地域で暮らすご夫婦が行政と連携して企画しているこのプログラムに実際に参加し、楽しみながら自然環境について学べるその内容の素晴らしさに私は感激しました。また、プログラム運営をしているご夫婦の温かさとプログラムを通して地域づくりに貢献しようとする熱い想いを感じ、これこそ、このプログラムの魅力だと思ったのです。そして、いつしか運営者を応援できるような評価をしたいと気持ちが変わり、事前に作っていた評価項目は一旦わきに置き、このご夫婦と評価研究を設計し直すことにしました。プログラムにかける想い、評価に期待していることなどを話してもらい、その後に参加者への聞き取り項目を一緒に作成しました。結果は論文だけでなくウェブサイトなどで公開することができました。
より良い評価を行うためには、まず、評価する側とされる側の間に、信頼関係を築くことが重要です。そのために、評価者はプログラム運営者がどのような想いで携わっているのかを、しっかりと学ぶ必要があります。そして、評価される側も評価で何を達成したいのかなどを明らかにすることが重要です。環境教育の評価とは結局、プログラム改善のために共に考える営みだと思います。プログラム運営者の想いを大切に、少しでも励みになるような評価研究をこれからも心掛けていきます。
また環境教育の評価に関する研究以外でも、現在はアジアにおける環境教育研究の発展を目指した取り組みや、新たなる評価手法の開発を目指した研究を、海外の研究者や異分野の研究者など、様々な方との連携のもと、実施しています。
岡山県における中学生を対象とした海洋学習プログラム
執筆に携わった書籍の例
環境教育研究に関する論文の例
海洋学習プログラムの評価
- 桜井. 2018. 里海を題材とした中学生への海洋プログラムの教育効果
- Sakurai, R., & Uehara, T. 2020. Effectiveness of a marine conservation education program in Okayama, Japan.
プログラム運営者との協働による参加型評価
野生動物との共存を目指す普及啓発の評価
- 桜井ほか. 2013. 兵庫県但馬地域におけるクマ対策住民学習会の効果測定―学習会をきっかけとした参加者の意識や行動の変化―
- Sakurai & Jacobson. 2011. Evaluation of the Monkey-Persimmon Environmental Education Program for reducing human-wildlife conflicts in Nagano, Japan.